県道道メモ(2008年9月28日)

甲子道路の開通で、登山道国道は降格になったのか

甲子道路開通のニュース

去る2008年(平成20年)9月21日(日曜日)午後2時、福島県の国道289号において、甲子道路(かしどうろ、南会津郡下郷町〜西白河郡西郷村)が全線開通しました。

これまでは、国道289号の下郷町から西郷村にかけての区間は、甲子峠(かしとうげ)が行く手を阻み、自動車の交通は不能になっていました。いわゆる「開かずの国道」となっていたのです。そのため1975年(昭和50年)度から福島県が総延長約23.3キロメートルの甲子道路の整備を進め、また中心部の甲子トンネル(延長4345メートル)付近においては1995年(平成7年)度から国土交通省による直轄事業として工事を実施し、今回の開通に至りました。

報道によると、午後2時の開通に先立ち記念式典が開催され、国土交通省東北地方整備局長・福島県知事・地元選出国会議員らが祝辞を述べ、テープカット・くす玉割りなどが行われ、盛大に開通を祝ったそうです。これにより、下郷町と西郷村は自動車が通行可能な道路で直接結ばれ、今後は両町村ひいては周辺地域の発展に貢献するものと期待されています。

登山道国道と登山道おにぎり

さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、このようにこれまでは国道289号は自動車交通不能だったのですが、国道自体は途切れてはおらず、徒歩による登山道が国道に指定されていました。これが世に言う「点線国道」あるいは「登山道国道」と呼ばれるものです。

特にこの国道289号は、登山道の上に国道標識が設置されているということで、いわゆる「登山道おにぎり」として道路ファンの間では大変人気のある国道になっています。

国道289号の「登山道おにぎり」
国道289号の有名な「登山道おにぎり」(2002年10月19日撮影)

登山道国道について福島県報を調査

そこで、今回の甲子道路全線開通により、「旧来の登山道国道はその役目を終え、国道ではなくなってしまったのではないか?」という疑問が自然と湧き出てきます。そこで福島県の発行する公報である福島県報を調べてみました。

平成20年9月1日〜9月26日の間に発行された福島県報をひととおり調査し、甲子道路開通に関連すると思われる福島県告示を以下のページにテキスト化して掲載しましたので、興味のある方は参照してみてください。

これらの告示については、地番から現地の地点を特定するのが困難なため、詳しい分析はできていません。しかし現在の時点で最も新しい告示「道路の区域を変更する件」においては、以下のようになっています。

福島県告示第六百四十三号 (道路の区域を変更する件)

道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第十八条第一項の規定に基づき、国道について道路の区域を次のように変更する。その関係図面は、福島県土木部道路総室道路計画課、福島県県南建設事務所及び福島県南会津建設事務所で平成二十年九月十九日から二週間一般の縦覧に供する。

平成二十年九月十九日

福島県知事 佐藤 雄平

路線名 区間 変更前変更後の別 敷地の幅員
(メートル)
延長
(メートル)
国道二八九号 南会津郡下郷町大字南倉沢字猪番場平八四一番一地先から
西白河郡西郷村大字真船字寺平二番一四地先まで
変更前 A 一・〇〜三七・〇 一〇、二五四・〇
B 九・七〜九〇・〇 五、八九〇・〇
変更後 A 一・〇〜三七・〇 一〇、二五四・〇
B 九・七〜九〇・〇 五、八九〇・〇

(道路計画課)

なお、この告示では「変更前」と「変更後」とを比較しても違いが見られませんが、これはおそらく表には現れない程度の変更だったのではないかと思います。

この告示の「A」の区間の方が、いわゆる「登山道国道」を含む区間であり、また「B」の方が新しくできた甲子道路の区間であることは、敷地の幅員を見れば容易に想像できます。このように最新の告示においても「A」の方が区域から除外されていないことから、結論としては「現時点においては、登山道国道は国道から降格にはなっていない」、すなわちバイパスと現道という関係でどちらも国道として併用されており、登山道国道は現在においても依然として国道である、というのが現在の私の考えです。

今後はどうなる?

ただし今後、そう遠くない将来には、この「A」の方が国道としての区域から除外されることになるのだろうとは思います。ただしそれがいつになるのかは正直言って全くわかりませんが、もしそうなった際は、福島県報において必ずその旨の告示が登載されるはず(さもないと道路法違反になる)なので、興味のある方は福島県報を今後随時チェックしてみるといいかも。

また前述の「登山道おにぎり」の行く末も気になります。もし国道から降格ということになれば、この標識も取り外されなければつじつまが合わなくなります。しかしここからは全くの空想なのですが、ひょっとしたら福島県ではこの標識を観光名所として残すということを考えているかも…。実際、青森県の国道339号(階段国道)のように国道そのものが観光地になっている例もあり、あながち可能性がないとも言い切れません。もしそうなれば、標識を残すためには登山道国道の降格処理も当面はされないのではないか…ということも考えられます。今後の動向が気になるところです。

追記(2008年10月19日)

例の「登山道おにぎり」はなんと、甲子道路が開通した9月21日の当日に撤去されてしまったそうです。登山道国道の入口にある旅館大黒屋さんのブログや、酷ラリの人ブログに載っていました。

なんと開通当日に撤去されてしまうとは…。素早い対応とは言え、こんなにあっさりとなくなってしまうとは意外でした。この上の文章で「ひょっとしたら福島県はこの標識を観光名所として残すということを考えているかも」なんて書きましたが、見事に粉砕されてしまいました。残念です…。

ただ、その後に発行された福島県報を平成20年10月17日付けまでチェックを進めてみましたが、やはり登山道国道を降格にする旨の告示はこれまでの所まだ出ていません。そのため国道標識は撤去されても、行政上はまだ国道として存続しているはずなのですが…。