すでに本サイト内で少し紹介していますが、茨城県では4月1日に茨城県道6路線の路線名が変更になりました。変更になった路線は以下の通りです。
路線番号 | 路線名(変更前) | 路線名(変更後) | 筆者による変更理由の推測 |
---|---|---|---|
12 | 烏山御前山線 | 那須烏山御前山線 | 烏山町が合併により那須烏山市へ移行したことによる |
29 | 常陸太田烏山線 | 常陸太田那須烏山線 | 同上 |
207 | 高田下館線 | 高田筑西線 | 下館市が合併により筑西市へ移行したことによる |
234 | 小田野口中ノ坪線 | 小田野大那地線 | 小字名「小田野口」・「中ノ坪」の代わりに大字名「小田野」・「大那地」を採用 |
286 | 中飯岩瀬線 | 深沢岩瀬線 | 小字名「中飯」の代わりに大字名「深沢」を採用 |
316 | 真岡下館線 | 真岡筑西線 | 下館市が合併により筑西市へ移行したことによる |
この6路線はいずれも栃木県との県境をまたいでおり、栃木県と共通になっている路線です。そこで栃木県の方ではこれらの路線はどうなっているのだろう? と思ったので、栃木県庁のサイトを見てみたところ、ありました、ありました。
栃木県のホームページから、中段あたりにある「まちづくり」のカテゴリ内の「道路」を選択し、次いで「道路の情報」を選択すると、「市町村合併等に伴う県道路線名の見直しについて」というページにたどり着くことができます。
このページには次のように記載されています。
市町村合併等に伴う県道路線名の見直しについて
平成17年以降の市町村合併により、県道の路線名で使用している地名等が変更されている場合があり、現行の路線名が旧地名を使用したまま長期間放置されると、道路利用者に混乱が生じる恐れがあることから、平成20年4月1日付けで、県道路線名の見直しを行うこととしました。
今回、栃木県内の県道294路線のうち、42路線の名称を変更します。
そしてこの後に、今回変更された42路線の一覧表と、それらの路線を示した地図がそれぞれPDFファイルで提供されています。このPDFファイルをもとに、栃木県で今回路線名が変更された県道の一覧を表にすると以下のようになります(路線名の表記方法は原文のまま)。
No. | 路線番号 | 路線名(変更前) | 路線名(変更後) |
---|---|---|---|
1 | 10 | 宇都宮 烏山線 | 宇都宮 那須烏山線 |
2 | 12 | 烏山 御前山線 | 那須烏山 御前山線 |
3 | 25 | 烏山 矢板線 | 那須烏山 矢板線 |
4 | 29 | 常陸太田 烏山線 | 常陸太田 那須烏山線 |
5 | 41 | 筑波 益子線 | つくば 益子線 |
6 | 52 | 矢板 馬頭線 | 矢板 那珂川線 |
7 | 56 | 下塩原 矢板線 | 塩原 矢板線 |
8 | 61 | 真岡 烏山線 | 真岡 那須烏山線 |
9 | 73 | 宇都宮 河内線 | 上横倉 下岡本線 |
10 | 76 | 坂本 白河線 | 伊王野 白河線 |
11 | 77 | 宇都宮 船生 藤原線 | 宇都宮 船生 高徳線 |
12 | 113 | 東那須野停車場線 | 那須塩原停車場線 |
13 | 148 | 御厨 多々良停車場線 | 野田 多々良停車場線 |
14 | 150 | 山久保 今市線 | 山久保 平ケ崎線 |
15 | 169 | 青柳 日光線 | 栗山 日光線 |
16 | 171 | 下平 上境線 | 山内 上境線 |
17 | 181 | 北高根沢 氏家線 | 上高根沢 氏家線 |
18 | 200 | 秋山 万町線 | 秋山 葛生線 |
19 | 201 | 作原 上町線 | 作原 田沼線 |
20 | 207 | 高田 下館線 | 高田 筑西線 |
21 | 218 | 名草 坂西線 | 名草 小俣線 |
22 | 225 | 花岡 狭間田線 | 花岡 狹間田線 |
23 | 227 | 坂西 桐生線 | 小俣 桐生線 |
24 | 231 | 山内 大藤線 | 山内 牧野線 |
25 | 232 | 太郎沢 大内線 | 矢又 大内線 |
26 | 234 | 小田野口 中ノ坪線 | 小田野 大那地線 |
27 | 239 | 河内 上河内線 | 白沢 下小倉線 |
28 | 245 | 青柳 今市線 | 栗山 今市線 |
29 | 248 | 県西大規模公園線 | 日光だいや川公園線 |
30 | 254 | 毛里田 坂西線 | 丸山 葉鹿線 |
31 | 256 | 龍舞 山前停車場線 | 竜舞 山前停車場線 |
32 | 265 | 粟の宮 喜沢線 | 粟宮 喜沢線 |
33 | 269 | 大平山公園線 | 太平山公園線 |
34 | 276 | 井頭県民公園線 | 井頭公園線 |
35 | 278 | 中野 御厨線 | 中野 福居線 |
36 | 283 | 仙波 中央西線 | 仙波 葛生線 |
37 | 286 | 中飯 岩瀬線 | 深沢 岩瀬線 |
38 | 308 | 県北大規模公園線 | 那須野が原公園線 |
39 | 316 | 真岡 下館線 | 真岡 筑西線 |
40 | 337 | 鹿沼 粟野線 | 下日向 粟野線 |
41 | 339 | 小山 南河内線 | 小山 下野線 |
42 | 342 | 大田原 寒井線 | 中田原 寒井線 |
私は茨城県以外の都道府県道に関しては全くの素人でして、栃木県道に関しても不勉強のためわからないことが多々ありますが、この表を見て私なりに気づいたことをいくつか挙げてみます。
上表の路線番号41の項を見ると、「筑波益子線」が「つくば益子線」へ変更されています。この路線は現在では茨城県つくば市から栃木県芳賀郡益子町へ至る県道ですが、合併によりつくば市が誕生する前は、茨城県筑波郡筑波町から栃木県芳賀郡益子町へ至る県道でした。そのためこの路線は以前は茨城県においても「筑波益子線」という路線名だったのですが、1988年(昭和63年)1月31日に筑波町がつくば市と合併したのち、茨城県道としては1995年(平成7年)3月30日に「つくば益子線」へ路線名が変更されました。しかし栃木県の方では依然として「筑波益子線」という路線名のままになっていました。これは例えば茨城県側から「県道つくば益子線」を走ってきて県境を越え、栃木県に入った瞬間に「県道筑波益子線」に名前が変わってしまう(読み方は同じですが)という事態になっていたことになります。今回の栃木県側での路線名変更により、ようやく両県において路線名称が統一されたことになります。
上表の路線番号113の項を見ると、「東那須野停車場線」が「那須塩原停車場線」へ変更になっています。若い人でしたら「東那須野なんて駅あったっけ?」という疑問を持たれるかも知れません。東那須野駅は旧国鉄東北本線の西那須野駅と黒磯駅の間にあった駅です。1982年(昭和57年)6月23日の東北新幹線開業により、この駅は新幹線が停車する駅となり、同じ日に駅名が「那須塩原駅」へ改められました。しかしこの駅に通じる県道「東那須野停車場線」は路線名の変更がされず、旧駅に基づく路線名のままずっと存在していました。今回の変更により、東北新幹線開業から約26年の時を経て、ようやく駅名と路線名とが一致したことになります。
今回の栃木県道42路線の路線名変更を全体としてみると、合併による市町村名変更に伴うものは意外と少ないように感じられます。どちらかというと
というような変更が多いように見受けられます。市町村合併を契機として、「この際いい機会なので路線名を全面的に見直すことにしよう」というように考えたとみるのが妥当ではないかと思います。
さて、今回の栃木県道の路線名変更はこのように大規模なもので、茨城県のほか、群馬県・福島県へまたがる県道も含まれているため、これら隣県への波及という観点も見逃せません。そこでこれらの県における公報には、今回の変更に関する告示がどのように登載されているかを調べました。
これら3県の告示の全文を、当サイトの別ページに掲載しました。ご参考になれば幸いです。
さて最後に、肝心の本家本元である栃木県ではどうかというと、栃木県の発行する栃木県公報には、今回の県道路線名変更に関する告示がこれまでのところ見当たりません。平成20年1月〜3月に発行された分と、4月1日から11日までに発行された分をひと通り調べましたが載っていませんでした(もしかしたら見落としているだけなのかも知れませんが…)。
ただし道路法においては、都道府県道の路線名(あるいは路線番号)のみを変更する場合は、告示を義務付ける規定は存在しないようですので、告示がなかったとしても法に反するというわけではないようです。今回のような事例は、公報に登載するかどうかは各都道府県の裁量に委ねられているのが現状ではないかと思います(例えば茨城県においても、平成7年より以前ではこのような場合は公報への登載はほとんどありませんでした)。
しかし道路の歴史を調べる立場としては、できれば記録を公文書に残しておいて欲しいな…というのが率直な感想です。今回のようにホームページ上でお知らせという形で載せる方法は、一般に周知させるという点では非常に有意義だと思いますが、将来たとえば50年後・100年後の人が過去の歴史を調べたいと思った時に、公文書は重要な資料の一部になるのではないかと思うのです。各自治体の方々には是非ともご検討いただけたら幸いです。