若草大橋有料道路ぶらり旅

2006年5月7日 作成

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若草大橋有料道路の概要

若草大橋有料道路(県道68号 美浦栄線)
若草大橋有料道路(県道68号 美浦栄線)。

若草大橋有料道路(わかくさおおはしゆうりょうどうろ)は、茨城県利根町(とねまち)と千葉県栄町(さかえまち)を結び、利根川を渡る新しい有料道路です。茨城県道・千葉県道68号(美浦栄線゠みほ さかえ せん)のバイパスとして建設され、北の茨城県側は県道11号(取手東線)、南の千葉県側は国道356号バイパスと接続しています。既存の橋である上流側の栄橋(県道4号 千葉竜ケ崎線)、下流側の長豊橋(国道408号)の慢性的な渋滞解消を目指し、仮称「第二栄橋有料道路」という名前で茨城県道路公社が建設を進めてきました。今回2006年4月18日(火曜日)に茨城県知事や周辺市町村関係者等の列席のもと開通式典が行われ、同日午後3時に供用開始となりました。名称は一般公募により「若草大橋有料道路」に決定し、料金は普通車200円で、2036年までの30年間、料金が徴収される計画になっています。

開通してから最初の週末である2006年4月22日(土曜日)に、公共交通機関を使って若草大橋有料道路を訪ね、徒歩で橋を渡りました。

若草大橋有料道路の位置図
若草大橋有料道路の位置図。(Mapfan Webで表示: Mapfan Web)

バスで立崎へ

前日までの雨が上がり、抜けるような青空が広がった4月22日朝。この日は午後から子どもを習い事に連れて行かなければならない用事があって、午後1時までには家に帰らなければならないので、早起きして午前中にぶらり旅をすることにしました。

取手駅東口2番のりばから7時50分発「立崎(たつざき)」行きの大利根交通バスに乗車しました。部活とおぼしき高校生の集団が多数乗っていて、車内はにぎやかでした。定刻にバスは出発し、県道11号(取手東線)を西へと向かいます。ほどなく高校生の集団は高校の前で降り、車内は静かになりました。バスは小貝川をまたぐ戸田井橋(とだいはし)を渡って県道209号(立崎羽根野線)へ入り、住宅団地に差し掛かるにつれ乗客が1人2人と降りていき、全体の行程の3分の2くらい(北方車庫バス停)まで来た所でついに乗客は私ひとりになりました。

運転手さんは私ひとりのために安全運転で黙々とバスを走らせていましたが、終点の立崎に着く前に「どちらまで行かれるんですか?」と私に声をかけてきました。きっとこのバスを終点まで乗る人は普段はめったにいないのでしょう。私は「若草大橋を歩いて渡ろうと思いまして。ここから橋を渡って、反対側で成田線に乗って帰ろうかな、と思ってます。」と答えました。運転手さんは「ほぉー、そうですかぁー。でも歩きだと結構距離ありますよねー。」とおっしゃって、バスは終点の立崎へ8時20分頃に到着。「じゃ、お気をつけて。」「どうもありがとうございました。」とやりとりして、バスを降りました。取手駅東口から立崎までの料金は600円でした。


利根川の堤防に立つ

海から70キロメートル地点の利根川
海から70キロメートル地点の利根川。後方に若草大橋の姿がかすかに見える。
若草大橋近くの堤防でひなたぼっこする犬
若草大橋近くの堤防でひなたぼっこする犬。
4車線分確保された若草大橋の橋脚
4車線分確保された若草大橋の橋脚。

終点の立崎バス停は、県道209号(立崎羽根野線)の起点でもある立崎交差点にあります。ここでベルトに着けた歩数計のカウンタをゼロにリセット。利根川の堤防へ向け、しばらく里道を歩きました。

10分ほど歩くと利根川の堤防へ到着。堤防へ登ると雄大な利根川の流れが眼前に現れました。利根川の両岸には500メートルおきに海からの距離を示す標識が立てられており、ここがちょうど「海から70.00キロメートル」の地点でした。

堤防の上に立つと、あたり一面、視界をさえぎるものは何もありません。体を360度回転して周囲を見渡しました。東を向くと完成したての若草大橋、北西を向くと筑波山牛久大仏、そしてはるか遠くには日光連山の姿も見えました。そして、南西方向を向くと雪をかぶった富士山も。前日までの雨と強風のおかげで、この日はこの季節には珍しく富士山の姿を見ることができました。空を見上げれば時おり成田空港発着の旅客機が青空の中を舞っています。これらの景色がすべてひとつの場所から同時に見られるなんて、それだけでも幸せな気分です。河川敷には菜の花が咲き乱れ、あちこちからウグイスの鳴き声が聞こえていました。若草大橋有料道路の名にふさわしい、若草が生い茂る利根川の堤防の上をゆっくりと歩きました。

それから堤防を1キロほど歩き、若草大橋の付け根までやってきました。途中で野良犬が堤防の上でひなたぼっこしているのを見かけました。寒い冬を乗り越えて、犬も春の陽気を十分に満喫している様子でした。

完成したての若草大橋はやっぱりピカピカの姿でした。私は建設中の期間にここを訪れたことが1度もなくて、橋の姿を見るのは今日が初めてです(実は開通はまだまだ先のことだとずっと勘違いしていました)。車線は片側1車線、計2車線の供用ですが、橋脚を見ると4車線分が確保された形の橋脚になっていました。将来は4車線化する可能性もあるのかも知れません。

堤防の上から橋の付け根には柵がしてあり、ここから橋へ入ることはできなかったので、橋を渡る前にしばらく橋の写真をパチパチ撮っていました。すると私の歩いてきた方向の堤防から、ウォーキング姿の年配の女性2人が歩いてきました。「あら、ここからは橋に入れないのね」とか2人で話していたので「こんにちは」と声をかけました。橋が開通したと聞き、記念に歩いて渡りに来たそうです。「橋を渡るにはどうしたらいいんでしょうねえ?」と尋ねられたので「料金所の方まで側道を一旦戻るしかないでしょうね」と答えました。「歩いて橋を渡るのはタダですか?」「そうです」とかいう感じでしばらく話をして、女性たちは料金所の方へ歩いていきました。

私はもう少し橋の写真を撮ってから、同じく一旦堤防を降り側道を歩いて、内陸側にある料金所へ向かいました。料金所へ向かう途中で、先ほどの女性2人がもう橋を渡り始めているのを見かけ、彼女たちも私を見つけて手を振ってくれたので、私も手を振り返しました。


若草大橋を歩行

若草大橋有料道路の料金所
若草大橋有料道路の料金所。右側の建物が管理事務所。
橋の途中で千葉県との県境を渡る
橋の途中で千葉県との県境を渡る。

料金所はできたばかりの真新しい姿で出迎えてくれました。歩道から道路を挟んで向かい側にある管理事務所の外側にトイレがあるのを見つけたので、料金徴収のおじさんに「トイレを借りたいんですけど」と言ったら「ああ、いいけど車が危ないから注意して向こうまで渡って。」と言われました。料金所のそばを早足で歩いて道路を横切り、反対側の管理事務所のトイレを借りました。開通したばかりということもあり交通量がまだ少ないので、こんな芸当ができるんですが、今後交通量が増えてきたらこんなことはできなくなるかも。

男子トイレの小便器には、一首の短歌が書かれたシールが貼ってありました。以下に紹介します。

急ぐとも
心静かに 手を添えて
○○○○○○ ○○○○

下の句に何と書かれていたかは、皆さんがここを訪れたときのお楽しみにしておきます(男性限定ですが)。管理事務所は北行き車線側の料金所脇にあり、数台分の一般車用の駐車スペースがあってトイレも自由に利用できるようになっています。(ただしウォーカーにとっては今回のように道路を横切らなければならないので、この辺が改善されるともっと良いのですが…。)

さて、いよいよ全長597メートルの若草大橋を渡ります。もちろん歩道はちゃんと整備されているので、歩きにくいということはまったくありません。橋の上から眺める利根川の景色は最高でした。交通量はやはりいたって少なく、車は数分おきに1台通過する程度です。そよ風の音と鳥の鳴き声がするだけの静かな橋をゆっくりと渡りました。


千葉県側を少し探索、そして帰路へ

千葉県道409号(佐原我孫子自転車道線)
利根川の堤防上を通る千葉県道409号(佐原我孫子自転車道線)。後方の橋が若草大橋。
県道68号旧道末端にある神社
千葉県道68号(美浦栄線)旧道の末端にある小さな神社。後方が利根川の堤防。
神社の脇にある道標
神社お堂の脇にある道標。

10分ほどで橋を渡り終え、対岸の千葉県栄町側の堤防までたどり着きました。対岸の堤防は千葉県道409号(佐原我孫子自転車道線)のサイクリングロードになっていますが、やはり橋の付け根から直接堤防へは柵がしてあって降りられないので、一旦有料道路の終点の国道356号バイパス交点まで歩きました。若草大橋有料道路を初踏破した瞬間でした。こちらの交差点は【若草大橋入口】という交差点名が既に信号機に取り付けてありました。

そこからぐるっと回って再び堤防へ戻り、千葉県道409号(佐原我孫子自転車道線)へ立ち、県道標識の写真を撮りました。ヘキサの形式が微妙にイレギュラーになってて面白かったです。

今回の旅にはもうひとつの小さな目的がありました。若草大橋開通に伴って旧道になった県道68号(美浦栄線)の千葉県側末端を訪問することです。これまで県道68号は、利根川の両岸で道が途切れている、いわゆる「末端県道」でした。今回開通した若草大橋有料道路は従来の県道とは少し離れた場所にできたので、旧道はそのままの形で残されています。県道68号旧道の千葉県側末端は、堤防の直前までセンターラインのある2車線道路になっていました。

そこで末端付近の県道脇に小ぢんまりした神社があるのを見つけました。近づいてみると、お堂のそばに石で作られた道標が立っていました。4面のうち3面に文字が刻まれていて、内容は以下のようになっていました。(■は判読できなかった字。)

これは明らかに、昔はここに渡し舟があったことを示すものであると思われます。やはり、ここで県道が途切れていたのには意味があったのです。一部判読できませんでしたが「文化四年」とみられる文字が刻まれていたので、この道標が建てられたのがこの年(西暦1807年)なのではないかと推測されます。江戸時代に幾人もの人々が、この神社で安全を祈願してから利根川を渡っていく姿を想像して、ワクワクした気持ちになりました。

この時点で午前11時10分です。1時までに帰宅するには、最低でも11時57分の成田線我孫子行き電車に乗らなければならない。時間がやばくなってきたので、あとは千葉県側の県道68号(美浦栄線)を終点まで歩き、国道356号の現道を通って、JR成田線の安食駅(あじきえき)へ向かいます。国道356号現道は歩道がなく交通量も多かったので徒歩には不向きでした。最後は本当に乗り遅れそうだったので早足で歩き、クタクタになりました。安食駅に11時52分到着。急いで切符を買ってホームに上がるとすぐに電車が来て飛び乗り、帰途に着きました。立崎バス停から安食駅までの歩数は10,708歩でした。