(5) 1991年8月7日 — 乗鞍岳・高山

雨 のち 霧 のち 薄曇り


Diary

8月7日の行程図

「ゴーー」。梓橋駅のホームにあるベンチで寝ていたら、突然の轟音に目が覚めた。列車が通過しているのだ。通り過ぎるときに列車の最後尾を見たら「急行アルプス」。なるほど、新宿発の夜行列車だ。時計を見たらまだ早かったのでもう少し寝ようと思ったが眠れなかったので、もう起きることにした。

まず今日のメインは何といっても乗鞍である。昨日まで上高地とどっちに行くか迷ってたんだけど、上高地は一般車両通行禁止だし、朝雨だったから感動を呼ぶような景色は見えないだろうし、どっちみち景色がみえないんなら、かねてよりの目的であった「FZRで行くことのできる(おそらく)日本で最も高い所」への到達を達成した方がひとつのライセンスみたいにもなるし、と思い乗鞍の方を選んだ。R158から乗鞍高原を通って登っていく県道はすごくきつかった。それに道がところどころ非常にせまく、おまけに標高が高いせいで空気がうすいせいで、FZRは途中何度もエンジンが止まった。そのたびに「たのむ。がんばってくれ。オレはおまえだけが頼りなんだ」とFZRに話しかけながらヨロヨロになって登っていくと、頂上付近になって突然霧がバーッと晴れ、それと同時に乗鞍の姿がド迫力で眼前に現れた。そのときの感動はものすごかった。

乗鞍岳
県道を登っていると突然霧が晴れて姿を現した乗鞍岳(写真3枚を結合)。

駐車場にバイクを停め、あたりをウロウロしてるうちに、足は偶然乗鞍岳山頂の方へ向かっていって、「んぢゃちょっと登ってみっか」と思い進んでいったが、5分もしないうちにゼエゼエ。やはり空気がうすいのだ。ここは3,000メートルの所なのだ。しかし一度始めたんだから引き返すわけにはいかないと思い登っていった。頂上付近に売店があるのには驚かされた。1時間位で頂上にたどりつき、標高3,026メートル、生まれてからの最も高い所の記録を大幅に更新して(今までは中2の時の尾瀬の燧ケ岳の2,346メートル)、頂上から見る眺めは最高だった。

R158へ戻る下りは、FZRは相変わらず不調だったが、乗鞍スカイラインは上りの道とうって変わってすごくいい道だった。さすが普通車で1,500円、二輪で1,080円も取るだけのことはある。

R158をどんどん下って、高山に着いた時は(午後2時)すっかり空も晴れていてめちゃくちゃ暑くなった。ツーリングに出てから初めて夏らしい夏に出会ったって感じ。その先の荘川村から白鳥町まではR156との重複区間である。そこで156と158の標識が縦に並んで付いている標識を発見したので、感動して写真を撮った※(1)。このパターンを見たのは生まれて初めてかもしれない。

Note
※(1) 今で言う「おだんご標識」ですね。

午後5時、白鳥町に着いた。美濃白鳥駅にバイクを停めて辺りをブラブラした。歴史のことはよく知らないが、なんとなく昔ながらの雰囲気を残している風情のある街だった。

そこからまたR158単独区間を走り、油坂峠※(2)を越えて福井県突入。九頭竜ダムでちょっと休んでから、ここ越前下山駅へやってきた。

Note
※(2) 油坂峠は現在は立派なトンネルができているそうですが、当時は厳しい峠道でした。

そして駅の待合室で日記を書いているのだが、とてもダメだ。夜になってからオレのまわりで蛾をはじめ変な虫がいっぱいブンブンしだして、全く落ちつけない状態なのだ。少なくとも20匹くらいいる。こんな夜になったのは初めてだ。今までは長野県でしかもさらに寒いくらい涼しかったのが、今日標高のわりと低い所まで降りてきてしかも今日になって暑くなったからであろう。……と日記を書いている間にも蛾がオレのホッペにくっついてくる。ヒエー助けてくれーー! もうたまらん。明日からは絶対に蚊取線香を買って焚くことにしよう。

と言っていると電気が消えてしまった。これで蛾もおとなしくなってくれるかな。お願いだから寝る邪魔をしないでくれよ。

本日の走行距離: 221km。


Photo

[梓橋駅の朝]
梓橋駅の朝。このベンチで寝ていた。
[乗鞍岳山頂]
乗鞍岳山頂で記念撮影。
[高山駅]
高山駅。この頃にはかなり暑くなった。
[国道おだんご標識]
当時珍しかった国道おだんご標識。

※写真をクリックすると拡大表示します。